高齢な父の財産について長男である私が管理して欲しいと言われ、家族信託というものと任意後見制度を検討しています。どちらかだけでは不十分で併用を勧められているのですが、本当にそこまでやる必要があるのでしょうか。両方するとなると費用もバカにならないため、アドバイスが欲しいです。
相続 > 家族信託 rainbow / 2022.04.251.管理対象とする財産の側面から
任意後見制度は、基本的には委任者(父様)の全財産を管理対象とします。(法定後見制度の成年後見人のように、全財産の管理がマストではありませんが、一般的には全財産を管理対象とします)
一方、家族信託は、委託者(父様)の固有財産のうち、信託の仕組みで管理すべきものを選択して、管理対象とします。信託財産としない財産に対しても、認知症になった場合に備えておきたい場合に、任意後見契約との併用が考えられます。
2.身上監護の側面から
家族信託は「財産承継機能を備えた財産管理」制度ですから、身上監護機能はありません。
本人(父様)の認知症が著しく進行した際に、生活環境を整えるための種々の契約(介護・医療契約)を、正規の権限をもってきちんとやるには、成年後見制度の利用が必要です。
ただし、ご相談者様は父様のお子様です。同居している、または近くに住んでいるお子様が、父様の面倒をよく見られている状況においては、介護・医療契約のシーンで、成年後見制度の利用を促されることはまずありません。身上監護の側面で、事実上、後見制度を利用せずともなんとかなることが多いです。
3.併用した際の論点
1)キャスト
家族信託の受託者と、任意後見人を同一人物(たとえばご相談者)が兼ねることができると誤解していると問題です。
任意後見人は、本人にある受益権も管理対象としますので、受益権者としての権利行使ができます。受益者には、受託者と監督する権限があるため、監督する人(任意後見人)と監督される人(受託者)が同じ人になる、というのは不健全です。
このようなキャストの重複を許容している専門家もいますが、この点を問題視している専門家の見解に正義があるように、筆者は感じます。
2)受益権者としての権利行使の射程
任意後見人は、受益権の管理も行いますが、受益権者としての権利行使をどこまで行えるかどうかの検証も必要です。監督的な権限はすべて発揮できるとして、処分的な権限や、信託の変更や終了に対する意思表示を、任意後見人はできるのか。
併用にあたっては、信託制度と後見制度の双方に高いレベルで精通した専門家の支援が必須です。そのような専門家をブレーンにつけて、取り組んでみてください。
回答No.1 2022.05.03 10:13
お父様の財産・収入状態によってどちらかでいいか、併用するのかを考えていきましょう。
財産に信託不能な財産があって、この財産を何とか管理・処分したいという要望があれば任意後見はマストになります。
具体的には、農地や譲渡制限株式でしょうか。
これらの財産も意思能力低下で管理権が凍結することは避けたいもの。
もっとも財産の中に金銭が潤沢にあったり、収益金を生む資産が信託できるなどの状況にあれば、あえて任意後見までして農地や譲渡制限株式の管理処分の自由を確保する必要はないかもしれません。
要するにお父様のライフスタイルの維持改良にとって信託不能な財産を活用する必要性があるかどうかです。
必要性があるとなれば、任意後見を活用しましょう。
さらにこの場合、遺言により管理・処分・継承の対策をとっておくとよいでしょう。
任意後見を受任すると家族信託とは別次元の責任が発生します。
身上監護責任です。
家族であれば身上保護は当然なのでしょうが、それでも家族間の甘えで任意後見の本来の意味である生活・医療・介護の手配と支払いによる本人の最善の利益の実現を忘れてしまうこともあるようです。
任意後見はしっかりと本人を護る(その手段として後見人が財産管理・処分する)。
家族信託はしっかりと財産を護る(その目的は本人が決める)。
二つは似て非なるものですので、しっかりと理解してどのように活用するかを考えましょう。
回答No.2 2022.04.30 20:11